依田一義の不動産blog

依田一義がお送りする住宅に関するあれこれを綴るブログです。

依田一義のエネルギーコラム ~スマートシティー~

東日本大震災被災者が暮らす宮城県東松島市の災害公営住宅で、太陽光パネルによる電力を、近隣の病院などへ供給するシステムが来月稼働する。震災後、街全体の電力利用をIT技術で効率化する「スマートシティー」が全国的に増えているが、街区を越えた電力融通にまで踏み切る例は初めて。大規模停電時の自活とともに、電力の地産地消で地元に経済効果を生み出す先進モデルとして被災地外の注目も集めそうだ。

日本初の試みが始まるのは、市営柳の目東住宅(集合住宅15戸、戸建て70戸、計画人口247人)。積水ハウスが設計・施工した。

住宅の屋根などに設けた太陽光パネルで計460キロワットを発電し、各家庭に供給するほか、市がひいた自営線で近隣4病院と公共施設へも送電。夜間は共用の大型蓄電池にためた電力を使う。非常用のバイオディーゼル発電機も設置した。

環境に配慮した大規模なスマートシティーとしては、パナソニックなどが神奈川県藤沢市で手掛け、全戸に太陽光パネルや蓄電池を備えた例や、三井不動産が、街区内のマンションと商業施設などで電力を融通できるようにした千葉県柏市での例などが知られる。それらと比べると東松島公営住宅は小規模だが、自営線を整備して街区外へ送電する取り組みは前例がないだけに、プロジェクトリーダーを務めた積水ハウスの石田建一執行役員は「全てが手探りで苦労した」という。

一連のシステム構築には5億円かかり、環境省補助金などを受けた。一方、東北電力の電気料金との差額から、東松島市には毎年数百万円の利益が発生し、20年以内に投資回収できる計算だ。「エコだけではない。電気代が地元に還元されて地域活性化に役立つ仕組みとして広がれば」と、石田氏は期待を込める。