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依田一義の不動産blog

依田一義がお送りする住宅に関するあれこれを綴るブログです。

依田一義のエネルギーコラム ~清水建設:水素エネルギー利用システム~

 清水建設が開発するのは、建物付帯型の水素エネルギー利用システムである。太陽光などの再生可能エネルギーで作った電力のうち、建物内で消費できなかった余剰電力を最大限に活用できるようにする。

システムの中核になるのは「水素吸蔵合金タンク」である。余剰電力を使って製造した水素を貯蔵・放出して、燃料電池で電力と熱を供給する仕組みだ。蓄電池と同様の役割を果たせることから、天候によって出力が変動する再生可能エネルギーの電力を安定化させる用途にも適用できる。

水素吸蔵合金は気体の水素を輸送・貯蔵する技術の1つとして開発が進められている。金属には水素に反応しやすいものと反応しにくいものがある。反応しやすい金属は水素を吸収する能力が高くて、放出する能力が低い。逆に反応しにくい金属は水素を吸収する能力が低くて、放出する能力が高い。両方のタイプの金属を使って合金を作ると、水素の吸収・放出能力ともに高い性質が生まれる。

国内では産業技術総合研究所産総研)が10年ほど前から水素貯蔵合金の研究開発に取り組んできた。水素貯蔵合金の課題は装置の大きさと製造コストにある。清水建設産総研と共同で、合金の材料や配合比を変えながらコンパクト化とコストダウンを図る。

水素の吸収能力が高い金属にはチタン、マグネシウム、ランタンなどがあり、放出能力が高い金属には鉄、コバルト、ニッケルなどがある。産総研ではランタンとニッケルを組み合わせた水素吸蔵合金を開発している。

 

2020年のオリンピックまでに実用化

水素吸蔵合金を使うと、気体の水素を常温・常圧の状態で1000倍以上の容量まで貯蔵することができる。水素の貯蔵方法には気体のまま圧縮する方法や、マイナス250度以下の低温で液化する方法もある。圧縮すると150倍程度、液化すると800倍程度の容量まで水素を貯蔵することが可能だ。こうした方式と比べて水素吸蔵合金は貯蔵容量が大きく、常温・常圧で扱えるメリットもある。

さらに水素吸蔵合金は水素を吸収する時に熱を放出する一方、逆に水素を放出する時には熱を吸収する特性がある。この熱のエネルギーが大きいために、建物内の空調などに熱を利用することができる。放出した水素を使って燃料電池で電力と熱を供給する以外に、水素吸蔵合金の排熱と吸熱を生かしてエネルギーの利用効率を高めることが可能になる。

清水建設は独自に開発した「スマートBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)」を使って、水素貯蔵合金タンクと燃料電池を組み合わせた水素エネルギー利用システムを構築する。福島県郡山市にある産総研の「福島再生可能エネルギー研究所」の構内に実証システムを設置する予定だ。

今年の秋までにシステムの設置を完了して、2018年3月まで実証運転を続ける。その結果をもとに実用レベルの水素エネルギー利用システムを開発して、東京オリンピックパラリンピックが開催される2020年までに実際の建物や市街地に導入することを目指す。国が推進する水素社会を新しいシステムで広げていく。