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依田一義の不動産blog

依田一義がお送りする住宅に関するあれこれを綴るブログです。

依田一義のエネルギーコラム ~地熱発電の取り組み~

再生可能エネルギーの中で開発が最も遅れているのは地熱である。固定価格買取制度(FIT:Feed-In Tariff)の認定状況を見ても、地熱だけが極端に少ない。つい最近まで地熱資源が豊富な国立・国定公園の区域内で地熱発電所の建設を規制していたほか、温泉地でも発電設備の導入に反対する意見が根強くあったからだ。東日本大震災を機に再生可能エネルギーの重要性が高まり、政府は国立・国定公園内の規制緩和に乗り出した。

 

 一般に地熱発電所を建設するためには地下の掘削調査から始める必要があり、開発工程が長期に及ぶ。2017年度に改正するFIT法では数年先の買取価格を決めて地熱発電の事業性を判断しやすくする。それに加えて開発リスクを低減するための掘削技術の開発や全国規模で支援体制の整備も進めていく。

 

 大規模な地熱発電所になると、運転を開始するまでに10年以上かかる。最初は地下の地熱資源量を調査するのに5年程度、次いで環境影響評価に3~4年、そして発電設備の建設にも3~4年を必要とする。この間に十分な量の地熱資源を確保できないこともあれば、地元の反対で建設を断念しなくてはならないケースもある。ほかの再生可能エネルギーと比べて開発リスクが大きいため、発電事業者も二の足を踏みがちだ。

 

 それでも固定価格買取制度が始まったことによって、地熱資源が豊富な火山地帯を中心に発電所の建設プロジェクトが広がってきた。国立・国定公園の区域内でも開発案件が増えている。このうち環境影響評価を必要としない出力7500kW(キロワット)未満の地熱発電所が福島県熊本県で相次いで運転を開始した。

 

 地熱発電所の開発にあたっては、地下に存在する地熱資源の把握が欠かせない。発電事業者にとっては多額のコストがかかるうえに、十分な資源量を確認できる成功率は決して高くないのが現状だ。こうした地熱資源調査のリスクを低減するために、政府は「ヒートホール掘削」と呼ぶ新しい手法を普及させる方針だ。

 

地熱資源の分布状況を3次元で可視化

 

 ヒートホール掘削は地下500メートル程度まで小口径の調査井(ちょうさせい)を掘る方法で、地下の温度データを収集できる。通常の掘削調査では地下1500~3000メートルの深さまで大口径の調査井を掘る必要があり、それと比べて調査にかかる費用を大幅に軽減できるメリットがある。ヒートホール掘削で地下の高温域を特定できれば、その後に実施する発電に向けた掘削調査の成功率が高くなる。

 

 このほかにも地熱資源調査の精度を向上させる技術の開発が進んでいる。地熱資源調査の初期段階では、地下にある地熱の貯留層の位置を確認することが重要だ。従来は2次元のデータで貯留層を確認していたが、新たに3次元で可視化する技術を開発して分布状況を正確に把握できるようになる。

 

 一方では地下を掘削する機材にも改良を加える。これまで地熱開発の掘削調査には石油開発で使われる機材を応用してきた。ところが石油開発の現場は地盤の軟らかい場所が多く、同じ機材を地熱開発に利用すると掘削効率が悪くなる。この問題を解消するために、硬い地盤に適した素材を使って掘削機材を開発する。

 

 発電所の運転を開始した後にも課題は残っている。地熱発電では地下からくみ上げた蒸気と熱水でタービンを回転させる方法が一般的だ。蒸気と熱水の中にはシリカ(ケイ素)が含まれている。シリカは結晶化する特性があり、さまざまな工業製品に使われる有益な素材だが、発電設備などに付着してトラブルの原因にもなる。

 

 発電に利用する蒸気と熱水からシリカを回収できれば、トラブルを回避できるうえに、価値のある物質を抽出して資源の有効活用につながる。地熱発電所にシリカの回収プラントを導入するための技術開発も国の重要なテーマになっている。

 

 地熱発電所の建設を円滑に進めるためには、温泉事業者をはじめ地元の理解を得ることが欠かせない。政府は地域の支援組織として、地熱資源の開発を促進するJOGMEC石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の中に「地熱資源開発アドバイザリー委員会」を2016年6月7日に発足させた。

 

 この委員会は大学や研究機関の専門家20人以上で構成する。全国の自治体から要請を受けて、地熱発電に関する技術的なアドバイスや情報を提供することが役割だ。貴重な地熱資源を有効に活用できるように自治体や発電事業者を支援していく。同様に資源エネルギー庁が中核になって、自治体間の情報共有ネットワークも構築する。国を挙げて地熱発電の取り組みを拡大する体制が整い始めた。