依田一義の不動産blog

依田一義がお送りする住宅に関するあれこれを綴るブログです。

依田一義のエネルギーコラム ~水上式のメガソーラー~

 

水上式のメガソーラーを建設したのは、岐阜県に本社があるイビデンだ。創業100年を超える電子部品やセラミック製品のメーカーだが、1912年の設立当時は電力会社で、その後は建材や炭素製品などを生産してきた。愛知県の高浜市で操業中の「衣浦(きぬうら)事業場」の構内に以前は貯木場があり、その跡地がメガソーラーの設置場所になった。

貯木場の池の水面にフロート式の架台を設置して、7680枚の太陽光パネルを浮かべた。合わせて2MW(メガワット)の発電能力で、2月15日に運転を開始している。これまでに稼働した水上式メガソーラーでは埼玉県の「川島太陽と自然のめぐみソーラーパーク」(発電能力7.5MW)に次いで2番目の規模になる。

年間の発電量は240万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して660世帯分に相当する。発電した電力は固定価格買取制度で全量を売電する計画だ。

水上式のメガソーラーは夏の高温時に発電量が低下しにくいことがメリットの1つである。イビデンは太陽光パネルを水上に設置できるフロート式の架台を独自に開発した。素材には軽量で腐食に強い高密度ポリエチレンを採用している。特許を申請中で製品として外販する可能性もある。

 

100年前に水力発電事業を開始

イビデンの前身は「揖斐川(いびがわ)電力」である。岐阜県内を北から南へ流れる揖斐川の上流は水量が豊富で流れが急なため、水力発電に適している。揖斐川電力は1916年に「西横山発電所」(発電能力3000キロワット)を運転開始して以降、揖斐川の流域に水力発電所を拡大してきた。

業態を変えた現在でも3カ所の水力発電所を運営している。老朽化した発電設備を更新しながら、3カ所を合わせて2万6900キロワットの発電能力がある。従来は発電した電力を生産拠点の事業場で消費していたが、2012年度以降に設備を更新した2カ所は固定価格買取制度の認定を受けて売電できるようになった。3カ所の中で最も古い「東横山発電所」(1921年運転開始)の設備も現在更新中だ。

水力のほかにも事業場の構内に高効率のガスコージェネレーションシステムや太陽光発電システムを導入して発電量を拡大してきた。2014年度の実績では国内の事業場で消費した4億4300万kWhの電力のうち、水力で1億kWh、ガスコージェネで6200万kWhを自家消費する一方、残りの2億8000万kWhを他社から購入した。水力発電の売電量は6500万kWhである。

設備を更新中の東横山発電所が稼働すると、同様に発電した電力を売電する見通しだ。固定価格買取制度を適用できれば、売電収入と電力購入費の差額分がコスト削減につながる。新しい設備を導入して発電能力を増強できるため、CO2(二酸化炭素)の排出量を削減するメリットもある。