依田一義の不動産blog

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依田一義の不動産コラム ~ハウステンボスが開発中の「変なホテル」~

ハウステンボス長崎県佐世保市)が2015年から開発を進めている「変なホテル」。「快適性と世界最高水準の生産性の両立」を目的に、受付や宿泊者へのサービス対応にロボットを活用して省人化を図り、さらに新しい建設工法や省エネシステムも積極的に導入するなど、ユニークなスマートホテルプロジェクトとして注目を集めている。

変なホテルは第1期棟(イーストアーム)と第2期棟(ウェストアーム)で構成する。第1期棟は2015年7月に開業しているが、続いて2016年3月14日に第2期棟が完成してグランドオープンを迎えた。2つの棟はそれぞれ2階建てで、72の客室を持つ。しかし建築コンセプトは異なっており、今回完成した第2期棟は国産材と再生可能エネルギーの活用が大きな特徴となっている。

第1期棟は鉄の柱で組む鉄骨造だが、第2期棟は一部を除いて木造だ。そして構造材料にCLT(Cross Laminated Timber)という、ひき板(木の板)を並べた層を組み合わせた木材パネルを利用しているのが大きな特徴だ。

CLTはオーストリアを中心に利用が進んできた材料で、高い遮音・耐火性を持つ。約10センチメートル厚のCLTパネルは、1.2メートル厚のコンクリートと同等の断熱性能を持つとされており、省エネ性能も高い。同じ大きさのPC(プレキャストコンクリート)パネルを使う場合より建物を軽量にでき、耐震性を高められるメリットもある。

ハウステンボスによれば宿泊施設にCLT工法を利用するのは国内初の事例になる。CLTパネルに利用した木材は全て九州産で、そのうち20%は地元長崎県産のスギ材を活用した。なお、これらの第2期棟の設計・施工は鹿島建設と一部の技術支援を住友林業が担当している。

 

第2期棟のもう1つの大きな特徴がエネルギーの自給自足だ。東芝の自立型水素エネルギー供給システム「H2One」を導入した。H2Oneは東芝独自の水素EMSにより、再生可能エネルギーと水素でCO2フリーな電力供給を行えるのが特徴のシステムだ。

H2Oneは太陽光発電システム、蓄電池、水素製造装置、水素吸蔵合金タンク、純水素燃料電池で構成している。日照時間が長い夏季の太陽光で発電した電気の余剰電力を使い、水素製造装置で水を電気分解して水素を製造する。この水素はタンクに貯蔵し、冬季に純水素燃料電池で発電することで電力と温水が得られる仕組みだ。

第2期棟ではH2Oneの導入により、1年を通じて水と太陽光のみで客室12室分の電力を自給自足できるようになる。設置した太陽光発電システムの出力は62kW(キロワット)、H2One全体の出力は54kW、貯蔵電力量が1.8kWh(キロワット時)だ。